過ぎゆく夏に
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 

いい加減にしろとか、冗談はよせだとか、
思えば毎年のように悪態をついてしまうほど、
日本の夏は例年からして“暑い夏”じゃああるのだけれど。
それでもとか、若しくは例外的にという言い方を引っ張って来ても
決して大仰じゃあなかったくらいに
今年の暑さは半端じゃあなくて。

 「何たって世界的に異様な数値を弾き出してたそうですし。」

 いくら、今時ならではのヒートアイランド現象のせいもあるって言ったって
 海水温が上がったのは地球温暖化のせいですってね
 地球規模…

おや自由研究が三行で終わってしまいましたねぇと、
それぞれ瑞々しいまでに愛らしい笑顔となって、
あははと朗らかに笑い合ってから、さてと
庭先から濡れ縁へ吹き込む風も涼やかな
八百萬屋の奥向き、純和風のお茶の間にて
丁寧に使い込まれた卓袱台を取り囲んでの向かい合い、
仕切り直した三華様がた。
学校からの課題もそっちのけで算段していたのが、
過ぎゆく夏を惜しんで
多少は涼しかろう夕べの催しへの打ち合わせで、

 「ここの町内会の主催で、
  ちょっとした屋台も出る縁日があるんですよ。」

さすがは由緒のあるご町内ということか、
氏神様である神社を中心に、
四季折々、様々なお祭りがあるらしく。
お嬢さん方は夏も結構忙しく、
ご近所界隈の風物詩といや、
大川の花火以外、あんまりお顔を出せなんだものの、

 「私はほら、
  ご近所もいいところなんで毎年出かけてはおりまして。」

子供たちが担ぐ小さくて可愛らしいお神輿も出るし、
そんな神社でのお参りに行き来する人目当て、
沿道を人が埋めるほどなんていう大きな規模ではないけれど、
かき氷や焼きそばにりんご飴といった
お決まりのB級グルメにビールやラムネ…とは別口、
宵のお出掛けという特別が許されてはしゃぐ子供たちが楽しみにしていよう、
綿あめだのヨーヨー釣りだの、
的あてにくじ引きや
ちょっと怪しそうなおもちゃだのを売る夜店も結構出るし。
こういうことには頼りにされるという五郎兵衛なので、
そのお手伝いという格好、
裏方としての参加をしてもいたという平八であり。
当日は見て回る側でいられるらしいので、

 浴衣でおいでになりませんか?
 そうですね、もう一回くらい着たいですしvv
 ♪♪

暑い暑いとぼやきつつ、それでも結構あちこち出掛けたお嬢様たち。
高原の別荘や渚でのお泊りでも、
キュートだったり可憐だったりといった夏のコーデをご披露してもいて。
勿論、忘れちゃあいませんよと浴衣姿も楽しんだ。

 「開催は今週末ですから、土曜の六時ごろに此処へ来て下さいな。」

何だったら浴衣の着付けもゴロさんに、
あ・いやそこは個々人で自由にの方がいいですかね、と。
さりげなく器用な想い人の話を持ち出したひなげしさんの勧めに従い、
夏休み終盤を飾るイベントとして、
お邪魔することと相成って。
ミュールというのも今時ですが、やっぱり下駄でしょうかとか、
団扇はウチでも用意しますが、
道中で暑いでしょうから扇子をお持ちになった方がとか、
愉しいお出掛けへの準備のあれこれ、
宿題はやっぱり置いといて扱いのままでキャッキャと沸きつつその日は過ごして。




 「おお、これはお二方。」

淡い縹の地に細い鉄線を思わせる濃紺での筆書き、
大小の花の部分だけ白抜きされた百合が大人っぽい、
そんな図柄の浴衣と格子柄の帯をまとった七郎次に、
蘇芳や緋色といった赤色系ばかりながら
様々な色合いをした シャープな翅の蝶たちが
足元という裾から上へ上へ飛び立ってく、
今様のデザインの浴衣へ濃色の帯を合わせた久蔵が。
慣れぬ恰好だろうにそうとは思わせぬ颯爽とした佇まい、
背条も伸ばしての朗らかに、
こんばんわとまだまだ明るい宵の “八百萬屋”を訪れて。
いろんな意味からようよう知ったる知己の艶姿へ、
これはこれはと目を細めた甘味処の御亭。
彼は今宵も裏方に徹するからだろか、
屈強で大柄な体躯にはよく映える、
普段着だろうTシャツとカーゴパンツという軽快ないでたちをしておいでで。
店もそのまま営業を続けるのか、
こちらは勝手口だというに、
浴衣姿の女性らが、通り過ぎざま彼へと会釈を寄越してゆく数の多きこと。

 「…こりゃあヘイさんがやきもきするわけだわ。」
 「……。(頷)」

駅からここまでを辿る道筋は、
途中からちょっと広めの生活道路、いわゆる中通りとなり、
日頃は住人や女学園へと通う女子高生たちしか通らない道なれど。
今宵はちょっとばかり趣も変わって、
電球を仕込まれたそれだろう提灯が連なる、
わくわくするよな夜祭りへの入り口がしつらえられており。
そちらもご近所のお子様たちか、
こちらの腰辺りという高さをわっと歓声上げて駆け抜けるおちびさんたちもおれば、
髪を上げての浴衣姿もまた艶やかな、
十代からもちょっと妖麗なお年頃までという、様々な世代のお嬢様がたが
結構な数で笑いさざめきながら通り過ぎ。

 「女学園の卒業生もたんとおいでだそうでな。」
 「ははぁ。」

ある意味“夏の同窓会“とかと七郎次が囁けば、
久蔵もうんうんと頷いたが、
そんな彼女らへ、

 「ヘイさんなら、そろそろ戻って…。」

来るころだがと言いかかったお声と、

 「ひゃあぁあぁぁああ…っ!」

可愛らしいところへ少々愛嬌もある、
でもでもきっと本人は目いっぱい焦っていることを忍ばせる、
素っ頓狂な悲鳴が上がり。
それが丁度彼ら彼女らが向かい合ってた“八百萬屋”のお勝手のある道の向こう、
塀で隔てられているがお屋敷じゃあなく
町内会の倉庫か何かがある区画を挟んだ向こうの通りを右から左へと駆け抜けてから、
横手の道を今度はこちらへ向けて駆けつけんとしている移動っぷりが
そのまま“見て”取れるよな くっきりとしたにぎやかさ。
待つというほどのこともなく、すぐにも声の主が曲がり角から姿を現し、

 「もうもうゴロさん、
  キャストの人たちが入ってるんなら言ってくださいよっ!」

 「おや、ヘイさんだ。」
 「米。」

やけに憤慨しておいでのお嬢さんは、まだ通常運転中か、
胸元へ大きめの四角いイラストがプリントされたTシャツに、
水色のデニムの短パン姿。
そこに居合わせたお友達へ、おやと彼女の側からも驚いたような顔をしたものの、

 「…すいませんね、まだ着替えてないんですよぉ。」

恐縮しきりというお顔、素早く立ち上げるのはお流石で。
とはいえ、いつものようにすぐさまニコリとはならず、
そして彼女のそんな様子への心当たりがさすがにあるものか、

 「すまんかったな。若いのが妙に張り切っとったんで。」

五郎兵衛さんが、短く刈った自身の銀髪をサリサリと大きな手でかき回す。
むむうと口許尖らせかけた平八も、怒る相手が違うのは承知か、
はぁあと肩を落とすと、

 「町内会の運営する出店、
  去年まではビンゴだったのが、今年は何とお化け屋敷なんですよね。」

そんな風に口にしたため、
七郎次はすぐさま “ああやっぱりね”という苦笑顔となり、
久蔵の方は “…?”と小首を傾げてから、ああと納得した次第。
活劇に使うツールの作成から、
難解なセキュリティのかかったネット上でのハッキングまで、
実際に暴れる方は金髪のお二人に任せるとはいえ、
こっち方面では怖いものなしの電脳小町さんは、
だがだが実はオカルトが大の苦手なのだそうで。

 「手伝わせるつもりはなかったんで話さなんだのだがな。」

それと、この時期はこの顔触れで集まったそのまま
宿題に四苦八苦するのが恒例なので、
まさかに皆で参加する運びを相談していようとは思わなかったらしい五郎兵衛、

 「まま、お化け屋敷だけは避ければいいさ。」
 「ううう。」

そんな風に言って、もう関わりなさんなと持ってってくれておいでの五郎兵衛なのへ、
でもでもと何か言いたげな平八なのは、

 “ははぁん?”

お化け役だか入口の当番だか、彼もそちらに出向く時間帯があるのだろうから、
避けろと言われても…平八としては複雑ならしいのは一目瞭然。

 「ともかく。着替えていらっしゃいな。」

何とも判りやすい煩悶振りへ、くすくすと微笑った七郎次の勧めもあって、
そうだったそうだったと住居でもある店の中へと入ってゆく彼らで。

 「一本道ですから。お二人は先へ行っててくださいな。」

こんな勝手口で待たせるのもなんだと思うたか、
平八がそんな声を放って来、
顔を見合わせたそのまま、もう一回苦笑った七郎次と久蔵。
ではお言葉に甘えてと、ちょっぴり込み始めている雑踏へと足を進める。
華やかだからそう見えるのか、
五郎兵衛の言の通り
どちらかといや女性の姿が多いようで。
アセチレンランプの下、平たい水槽へ水風船を浮かべたヨーヨー釣りやら、
真っ赤な飴にくるまれた
割りばし付きの果実がスタンドに立てられたりんご飴の屋台やらが、
いかにもな祭りの風情を視野の中で主張したかと思えば、
焼きそばだろうかソースの香りと
綿あめだろうか甘い香りが入り混じり、
ざわざわという談笑の声、かき氷を削る涼しげな音が、
下駄の足音と一緒くたになって ほのかに蒸し暑い空気をかき混ぜる。

 「…。」
 「え? 久蔵殿、それ買うんですか?」

いきなり立ち止まった金髪のクールビューティさんが手を伸べて指をさし、
屋台のお兄さんに …やはり相手へも同じような疑問を持たせたらしく
何度も“これ?”と確認させたのが、
つややかな蜜飴がけの中へ封じ込められた皮付きりんごも結構大きい、
真っ赤っ赤のりんご飴。
ビニール袋をかけてもらった飴は、
作る過程ではそっちが底だったからか頭の部分に平たくなった飴が平たく広がっていて。
いかにも縁日の風物じゃああるが、

 “アタシ、食べきった覚えはないなぁ。”

綺麗だからと小さいころにねだって買ってもらいはしたが、
中に入っているのは紅玉で、堅い実だったせいだろう、
小さな口で齧りついてはみたけれど、
結局、1口2口で遠慮したような。
それとももしかして、
自分よりも超お嬢様な久蔵なので、
これが初めて見るりんご飴なのかなぁなんて、
七郎次がついつい思ってしまったような。
それはご機嫌そうな満面の笑み…だというのが判る人は限られているのだが、
嬉しそうに赤い果実を眺めつつ、
七郎次と手をつないで縁日めぐりを再開する紅バラさんで。
来ている浴衣も赤いので、そんな配色の上へ紛れかかりもするけれど、
それでもここまでの華麗な美少女が
夜祭にはありがちなそれ、赤い大きな飴を手にしているのは人目を引く。
わあ可愛い、久し振りに買ってみようかしら
あ、あれって三木さんじゃあない?
相変わらずお綺麗ねぇなどと、
本人よりも七郎次のほうが
ありゃまあとたじろぎそうなほどの注目を集めてしまっておれば、

 「…久蔵か?」

こそこそではなく真っ向からの名指しというお声がかかったのが、
ちょっぴり涼みたくなって水辺へ屈み、ヨーヨー釣りに挑戦した直後のことだろか。
金髪娘が二人並んでしゃがみ込んでて判りやすかったものか、
よくよく通る声の主が誰なのか、こちら側からもすぐ判り、
紅バラさんがわあと目を見張ってそのまま立ち上がったほどに効果は絶大。

 「ヒョーゴ。」
 「榊せんせえ、こんばんわ。」

手持ちに出来るよう、輪ゴムを足してもらった水風船。
お互いの手へ提げつつご挨拶をした相手は、
そちらはこの暑いのに一応はジャケットを羽織っておいでの兵庫せんせえで。

 「何だ、お主らも来ていたのか。」

出会ったのが意外だったか、おやおやというお顔になってしまわれ、
だが、久蔵の手に大きなブツを見つけると、

 「相変わらずの気に入りなのだな。」

切れ長の目許を細め、ククと小さく笑ってから、
麻地の上着の懐へ手を入れると、なめらかな所作で取り出したのが
小さな小さな、封筒などへのオープナーだろうカッターナイフで。
さほど大きい手ではない せんせえの手のひらに
あっさり隠れるほどの小さなそれで、何をするのかと思いきや。
素早い一閃を閃かせ、
久蔵が手にしていたりんご飴の上部分、
斜めにサクッと切り取ってしまわれて。

 「…え?」

何処をどう切ったものか、袋への切り目は見当たらず、
小さめのお皿のような形に切られた一部、飴をまとったままのりんごを、
久蔵の方からも嬉しそうにわくわくと手を伸べて
“おくれvv”というポーズをとるあたり、
もしかして彼らにはこれがいつもの食し方であるらしく。

 「ああ待て待て。確か、ここに…。」

上着のポケットをまさぐれば、ファスナー付きのビニール袋。
中には綿棒と一緒に お弁当などに使うピックが数本入っており、

 “何でそんなものを…。”

持ち歩いているのかなんて、野暮なことは訊きませんともさと。
ややもすると呆気にとられて見守る七郎次の前で、
切ったりんごをナイフの腹へとキープしていた器用なせんせえ、
やはり手慣れた様子でピックに突き刺し、さあお食べとヒサコさんへ手渡すところが
何とも…微笑ましいというか二人だけの世界というかで。(笑)

 「で。お主ら弓野の坊ちゃんを見かけなんだか?」
 「弓野?」

キョトンとしてしまう白百合さんのそばから、

 「よしちか、脱走したか。」

しゃりしゃりと飴がけりんごを食しつつ、
久蔵さんが意を得たりという言いようをし、

 『夏かぜを引いたらしくて、熱もあるようなのでってことから、
  兵庫が診立てて絶対安静だからなと言い渡していたのだがな。』

と付け足す目配せを送って来たのへと、

 「あらまあ。
  だってのに此処へ出かけて来るなんて、お祭りがお好きなんだ。」

通じてしまう白百合さんも白百合さんならば、

 「子供みたいなやつだ、まったく。」

それを自然なものとして受け取り、
滞りなく会話が続く榊せんせえも大したもので。
…今更かな?(笑)

 「じゃあ、久蔵殿も一緒に探して差し上げなよ。」
 「??」

ふふーと笑ってお友達の細い背中をひょいと押し、
何で何で?と合点がいかぬらしいのへ、

 「せっかくの縁日の宵だぞ?
  妙な事情じゃあるけど、
  せんせえと一緒に歩けるなんて楽しいじゃない。」

 「〜〜〜〜。///////」

口許へと立てた団扇の陰でこしょりと囁いて後押しをし、
行っておいでと送り出す。
何での答えは貰ったが、今度はいいの?と訊いてくる紅色の双眸のヲトメへと、
うんと深々頷いてやって。
惜しみなくにっこり笑った白百合さん。
とはいえ、
おっととと転びかかった久蔵へ手を差し伸べる兵庫という
やさしくも可愛らしいやり取りを見送って、
ちょっぴりやるせない溜息が漏れたのも正直なところ。

 “いいなぁ、ヘイさんも久蔵殿も。”

一番に想う人と一緒にいられる身がうらやましい。
七郎次が想う勘兵衛様は、選りにもよって警察関係者で。
事件が多すぎる警視庁勤務なその上、結構なキャリアを積んでるベテラン警部補。
よって、消防署の隊員以上に非番のない身。

 “同い年同士だと何かと揉めただろうな。”

ある意味、まだまだ十代でよかったような、なんて、
最近ではそんな風に思うことにしているくらいに、
約束するのが空しいほど、逢う機会の作れぬお人だから。
普段は結構割り切れてもいるけれど、
仲良しの二人がそれぞれに、想うお人といい空気になるの見たりするとつい、
自分はそうは行かぬのが 辛いような遣る瀬ないような。
周囲を流れる人々の行き来も、温気の多い夜気も、
なぜか自分だけを此処へ置き去り、取り残してゆくような気がして。
白い手に提げていた水風船、所在なさげなままパシャパシャと上下させ、
気を紛らわせておれば、

 「…え?」

ふと感じた視線があって、おやと顔を上げたれば、
その先に立っていたのが、
これまた先程の榊せんせえ同様に堅苦しい背広姿の壮年殿で。

 「え?え? なんで?」

特にメールをして確かめたりしちゃあないけれど、
こんなふうに人出の多い週末は突発的は事件も多い。
そうでないなら無いで、長期にわたる捜査の必要な、
難解で大きな事件に取り掛かっておいでやもしれぬ。
だってそういや、佐伯さんの方だってあんまりお姿を見かけしてないし。
どうせお忙しいに決まっていると、
無為な期待も予想もしちゃあいない。
だったものだから尚のこと、
突然現れた存在が、ひそかに募らせていた願望の化身か幻かと思え、
すぐには本人様だと信じられなかったくらいで。

 …って、勘兵衛様、放っておきすぎ。(う〜ん)

片やの壮年様がまた、
視線が合いもし、相手の姿をやはりその視野の中へと認めたくせに、

 「……。」

彫の深い目許を戸惑いに揺らめかせ、
自分から踏み出してゆかれずにおいでだったのは、

 「そうまで疚しいのでしょうか。」
 「これ、ヘイさん。」

なかなかに辛辣なことを呟いた連れ合いを咎めたのが八百萬屋の二人なら、

 「…見間違うとは。」
 「違う違う、見違えたぞと云うたのだ、島田殿は。」

あらかた食べてしまったりんご飴の割り箸を逆手に握りしめ、
声なき声を発する壮年の口の動きを見て取って
…その割に大きく勘違いした紅バラさんを、
おいおいと窘めたのが保護者のせんせえ様というお二人だったりし。

 「あ、えっとぉ・勘兵衛様じゃないですか。」

ちょっと照れつつも、立ちんぼうしていても始まらないからと、
自分から声を掛けた七郎次お嬢様の。
髪を上げたうなじの白さや細い首元にかかる後れ毛へ
つい眩しげに眼を細める勘兵衛様だったのは。
そちらからだって久々の逢瀬、
ああこんなにも瑞々しい君だったのかと改めて体感したからで。
大人の皆様には同情の雨嵐だったそうなれど、
女子高生のお二人からは、
そんな眩しいなら普段から見慣れておけとのメールが容赦なく届いた
そんな後日談も今は後回し。

 「うむ。仕事というのではないのだがな。」

丁度大きなヤマに区切りもついて、
警視庁まで戻る車のその中で、
上への報告も急がぬ段取り、息抜きに運ばれてはいかがですかと、
征樹に勧められての夕べの散歩。
何なら五郎兵衛のところへ寄って、
吟醸酒のいいところを瓶ごと分けてもらおうかなんて
本当に偶然通っただけの身だったので。

 「これは、運がいいと思うべきなのかな。」

やっとのこと、その渋めのお顔をほこりと破顔させる勘兵衛なのへ、
うあ、そのお顔を至近で見せるなんてずるいずるいとときめきながら、

 「…知りません。///////」

かぁと頬染めた白百合さん。
夏の終わりにいいことあったねと、
道沿いに植えられていたオシロイバナの茂みが
甘い匂いで揺れていた夕間暮れの一幕でございます。




   〜Fine〜  15.08.24.


 *勘兵衛様だとて、
  七郎次さんをそりゃあ愛しいと思っているのですよという
  そんなくだりを書きたかったのですが、
  まあまあそこへたどり着くまでが長い長い。(笑)
  私はよほどのこと
  勘兵衛様に高い理想を持ちすぎているのかもしれません。
  …でも書いてみたらただのずぼらなおっさんでしたが。(こら)

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